文部科学省が作成している学習指導要領を参考にして、中学で学ぶ数学を振り返り、プログラミングに必要な数学知識について考察します。プログラミングに興味があるが、学生のころに数学を苦手にしていたかたが、中学数学を学び直す場合に参考にしていただければと思います。
学習指導要領について
学習指導要領は、文部科学省(またはその前身の文部省)が定めている教育課程の基準となります。出版社が作成する教科書もこの学習指導要領に沿っています。おおむね10年に1度改訂されています。
いままでに発表された学習指導要領は、国立教育政策研究所が一覧としてまとめています。
参考にするバージョン
直近2回の中学の学習指導要領の改訂版は以下の時期に発表されました。
- 2007年 中学校学習指導要領(平成20年3月告示)
- 2016年 中学校学習指導要領(平成29年3月告示)
2016年に発表された学習指導要領は、2021年から施行されていますが、この記事を書いている時点で中学3年まで置き換わっていないため、ひとつ前の2007年に発表された学習指導要領を参考にします。
中学数学は何を習うのか
中学数学については、以下に掲載されています。
https://erid.nier.go.jp/files/COFS/h19j/chap2-3.htm
中学の学習指導要領は、第1学年から第3学年に分けて学習目標が示されています。数学全体を以下の4つの内容に分けています。
- A 数と式
- B 図形
- C 関数
- D 資料の活用
それぞれ抜粋して紹介します。また各学年の標準としている授業時数も記しました。
第1学年(50分×140回)
A 数と式
- 負の数の意味を理解する(小学校までは正の数しか学習しない)。
- 正の数と負の数の四則演算ができる。
- 文字を用いて数量の関係を表すことができる。
- 文字を用いた一次式の加法と減法ができる。
- 方程式について理解する。
- 一元一次方程式($a x + b = 0$)が解ける。
B 図形(詳細を省略)
- 平面図形、空間図形について理解を深める。
C 関数
- 比例と反比例の意味を理解する。
- 比例と反比例を表、式、グラフなどで表すことができる。
D 資料の活用
- ヒストグラム(度数分布図)や代表値(平均値、中央値、最頻値)の意味を理解する。
- 誤差や近似値、$a \times 10^{n}$ の表現を理解する。
第2学年(50分×105回)
A 数と式
- 整式の加法と減法および単項式の乗法と除法の計算ができる。
- 文字を用いた式で数量の関係を把握することができる。
- 連立二元一次方程式が解ける。
B 図形(詳細を省略)
- 基本的な平面図形について理解をさらに深める。
C 関数
- 一次関数を理解する。
- 一次関数について、表、式、グラフを関連付けて理解できる。
D 資料の活用
- 確率の意味を理解すること。
- 簡単な確率を求めること。
第3学年(50分×140回)
A 数と式
- 正の平方根の意味を理解すること。
- 正の平方根を含む簡単な式の計算ができること。
- 単項式と多項式の乗法および多項式を単項式で割る除法の計算ができる。
- 公式を用いる簡単な式や因数分解ができる(公式は省略)。
- 自然数を素因数に分解できる。
- 因数分解や平方完成を用いて二次方程式を解くこと。
- 解の公式を用いて二次方程式を解くこと。
B 図形(詳細を省略)
- 基本的な平面図形について理解をさらに深める。
C 関数
- 二次関数($y = a x^2$ の形に限る)を理解する。
- 二次関数($y = a x^2$ の形に限る)について、表、式、グラフを関連付けて理解できる。
D 資料の活用
- 標本調査の意味を理解すること。
- 簡単な場合について標本調査を行い、母集団の傾向をとらえ説明すること。
プログラミングを学ぶ立場でのコメント
中学で学ぶ内容は基本的であり、それぞれの内容について、プログラミングを学ぶという観点で必要性についてコメントしていきます。
A 数と式
- 抽象的な文字として数を取り扱うことは、プログラミングでも基本的な武器であり、文字の式になれておくことはプログラミングにおいても重要だと思います。
- 中学で履修する式の計算は現実のプログラミングでも必要となる場合があります。
B 図形(詳細を省略)
- 中学数学の範囲では、一番プログラミングから縁遠いかもしれません。
- 一方、公理系や定理証明などを理解する基礎となります(古代ギリシャの時代から教育アイテムとして使われているわけですから)。一律に軽視してよい内容ではないことを補足しておきます。
C 関数
- 計算量オーダーを理解するための基礎となります。
- 逆にコンピュータを使って、表、式、グラフを関連付けて、この内容の理解を深めることができそうです。
D 資料の活用
- 統計では、コンピュータを有効に活用できるため、その基本としてこの内容を学んでおくことは有用だと思います。
- 高校数学でも同じ傾向がありますが、統計的な内容は受験にでる頻度の関係から、軽視される傾向がありますが、これからの社会での重要度は高くなっていくと考えています。
最後に
中学数学を振り返りました。基本的な内容が教育課程として定義されていることが分かりました。授業時間として、約320時間も実施されており、これは外国語に次いで多くの時間となっています。個人として苦手意識があっても、その人が考えるよりも多くの知識を持っているのではないでしょうか。
また数学的な現象は、現実世界で見え隠れしている面があるため、仮に中学数学の習得が十分ではない場合でも、現実世界の体験が増えると、学び直しには有利になっていると考えています。
次回は、同じ趣旨でプログラミングを学ぶという立場で高校数学を振り返ります。