前回は、Project Euler で紹介されている問題11を解いてみました。前回は、問題を変数としてプログラムに与えました。今回は、ファイルから読み込むプログラムを紹介します。
再掲載 問題11(マス目の最大の積)
下の20×20のマス目では、対角線に沿った4つの数字を赤色で表示している。
08 02 22 97 38 15 00 40 00 75 04 05 07 78 52 12 50 77 91 08
49 49 99 40 17 81 18 57 60 87 17 40 98 43 69 48 04 56 62 00
81 49 31 73 55 79 14 29 93 71 40 67 53 88 30 03 49 13 36 65
52 70 95 23 04 60 11 42 69 24 68 56 01 32 56 71 37 02 36 91
22 31 16 71 51 67 63 89 41 92 36 54 22 40 40 28 66 33 13 80
24 47 32 60 99 03 45 02 44 75 33 53 78 36 84 20 35 17 12 50
32 98 81 28 64 23 67 10 26 38 40 67 59 54 70 66 18 38 64 70
67 26 20 68 02 62 12 20 95 63 94 39 63 08 40 91 66 49 94 21
24 55 58 05 66 73 99 26 97 17 78 78 96 83 14 88 34 89 63 72
21 36 23 09 75 00 76 44 20 45 35 14 00 61 33 97 34 31 33 95
78 17 53 28 22 75 31 67 15 94 03 80 04 62 16 14 09 53 56 92
16 39 05 42 96 35 31 47 55 58 88 24 00 17 54 24 36 29 85 57
86 56 00 48 35 71 89 07 05 44 44 37 44 60 21 58 51 54 17 58
19 80 81 68 05 94 47 69 28 73 92 13 86 52 17 77 04 89 55 40
04 52 08 83 97 35 99 16 07 97 57 32 16 26 26 79 33 27 98 66
88 36 68 87 57 62 20 72 03 46 33 67 46 55 12 32 63 93 53 69
04 42 16 73 38 25 39 11 24 94 72 18 08 46 29 32 40 62 76 36
20 69 36 41 72 30 23 88 34 62 99 69 82 67 59 85 74 04 36 16
20 73 35 29 78 31 90 01 74 31 49 71 48 86 81 16 23 57 05 54
01 70 54 71 83 51 54 69 16 92 33 48 61 43 52 01 89 19 67 48
これらの数の積は、26×63×78×14=1788696 となる。
20×20のマス目において、同じ方向(上下左右、斜め方向)に隣接する4つの数の積のうち、最も大きいものを求めよ。
解答例(標準入力から読む)
前回でも述べましたが、問題として与えられている20×20のマス目の数字をプログラムに与える方法は大きく分けると2つあります。
- プログラムに変数として定義する。
- 内容をファイルに書いて、それを読み込む。
前回は1のやり方を示しました。今回は2のやり方を紹介します。
最初に、標準入力というシステムが持っているファイルから読み込むプログラムを紹介します。問題の数字列を2次元配列で表現すること、最大値の求め方は変更ありません。解説より先に、C 言語での実装例を示します。
#include <stdio.h>
int problem[20][20];
int main(void)
{
int i, j, product, max;
for (i = 0; i < 20; ++i) {
for (j = 0; j < 20; ++j) {
scanf("%d", &(problem[i][j]));
}
}
max = 0;
/* left to right */
for (i = 0; i < 20; ++i) {
for (j = 0; j < 17; ++j) {
product = problem[i][j] * problem[i][j+1] * problem[i][j+2] * problem[i][j+3];
if (product > max) {
max = product;
}
}
}
/* up to down */
for (i = 0; i < 17; ++i) {
for (j = 0; j < 20; ++j) {
product = problem[i][j] * problem[i+1][j] * problem[i+2][j] * problem[i+3][j];
if (product > max) {
max = product;
}
}
}
/* diagonally */
for (i = 0; i < 17; ++i) {
for (j = 0; j < 17; ++j) {
/* left to right and up to down */
product = problem[i][j] * problem[i+1][j+1] * problem[i+2][j+2] * problem[i+3][j+3];
if (product > max) {
max = product;
}
/* left to right and down to up */
product = problem[i+3][j] * problem[i+2][j+1] * problem[i+1][j+2] * problem[i][j+3];
if (product > max) {
max = product;
}
}
}
printf("Problem011: %d\n", max);
return 0;
}
標準入力というシステムが持っているファイルを利用するため、コード差分は少なくなっています(コード差分の背景色を変えています)。
変数 problem は、前回と異なり初期値を指定していません(外部変数であるため初期値は0になります)。関数 scanf を使って、標準入力から値を1つ読み、それを配列に格納しています。
実行する環境では、プログラムを動作させると、プログラムが入力待ちになるため、コピー&ペーストで問題の数字列を与えます。今回は量が多いため、入力リダイレクトを使ったほうが楽でしょうか。以下は、入力リダイレクトを指定したコマンドの実行例です。前回と同じく、問題の数字列を「problem011.txt」に格納しています。実行ファイル名は、「problem011_2.exe」としました。実行ファイル名は、コンパイルするときに指定できます。
$ ./problem011_2.exe < problem011.txt
解答例(ファイルから読む)
次に直接ファイル「problem011.txt」から読む方法を紹介します。
ファイルに関する基本的な処理は以下となります。
- ファイルをオープンする(fopen)。
- ファイルに対して読み書きを行う(今回の場合、fscanf)。
- ファイルをクローズする(fclose)。
C言語のライブラリでは、ファイルポインタと呼ばれる変数を経由して、ファイル入出力を行います。実装例を示します。
#include <stdio.h>
int problem[20][20];
int main(void)
{
FILE *fp;
int i, j, product, max;
fp = fopen("problem011.txt", "r");
if (fp == NULL) {
fprintf(stderr, "Cannot open \"problem011.txt\".\n");
return 1;
}
for (i = 0; i < 20; ++i) {
for (j = 0; j < 20; ++j) {
fscanf(fp, "%d", &(problem[i][j]));
}
}
fclose(fp);
max = 0;
/* left to right */
for (i = 0; i < 20; ++i) {
for (j = 0; j < 17; ++j) {
product = problem[i][j] * problem[i][j+1] * problem[i][j+2] * problem[i][j+3];
if (product > max) {
max = product;
}
}
}
/* up to down */
for (i = 0; i < 17; ++i) {
for (j = 0; j < 20; ++j) {
product = problem[i][j] * problem[i+1][j] * problem[i+2][j] * problem[i+3][j];
if (product > max) {
max = product;
}
}
}
/* diagonally */
for (i = 0; i < 17; ++i) {
for (j = 0; j < 17; ++j) {
/* left to right and up to down */
product = problem[i][j] * problem[i+1][j+1] * problem[i+2][j+2] * problem[i+3][j+3];
if (product > max) {
max = product;
}
/* left to right and down to up */
product = problem[i+3][j] * problem[i+2][j+1] * problem[i+1][j+2] * problem[i][j+3];
if (product > max) {
max = product;
}
}
}
printf("Problem011: %d\n", max);
return 0;
}
関数 fopen を使って「problem011.txt」を読み込みモードでオープンします。オープンに失敗した場合(指定したファイルが存在しないなど)、エラーメッセージを表示して、プログラムを終了します。ファイルのオープンに成功したら、fscanf を使い数字列を読み込み、関数 fclose を使ってファイルをクローズします。
標準入力を使ったコードとの差分は、背景色を変更しました。
このコードは、直接ファイルを開くため、入力リダイレクトのような外からの処理は必要なくなりますが、paiza.IO のようなブラウザ型の環境では実行できなくなります。
どちらを使うべきか
標準入力から読む場合とファイルから読む場合の、メリットとデメリットをまとめます。
標準入力から読む場合
- メリット
- オープン、クローズはシステムが行うため、プログラムの記述量は減る
- プログラムが、入力を与えるファイル名に依存しなくなる。
- ブラウザ実行型の環境でも実行できる。
- デメリット
- 実行時に、標準入力からデータを与えるための操作が必要となる。
- 一般的には、文字データのやり取りが中心になる。
ファイルから読む場合
- メリット
- ファイル名を固定しているため、実行時の操作は簡単になる。
- 文字データに限らない、自由なデータ形式を使うことができる。
- デメリット
- オープン、クローズ処理をプログラムする必要がでてくる。
- ブラウザ実行型の環境では実行できない(自前の実行環境を用意する必要がある。)。
競技プログラミングのサイト(AtCoder や AIZU ONLINE JUDGE など)を利用する場合や簡単にブラウザ環境で試したい場合には、標準入力を使いますが、世の中のシステムの多くはファイルを指定してアクセスしています。
ファイルを使う場合には、プログラミング言語の知識だけではなく、それが実行される環境の知識も必要になります。まずは、標準入力でプログラミングに慣れて、コンピュータ全般の知識が増えてきたら、ファイルを使う場合と使い分けてはどうでしょうか。
最後に
今回は、ファイルから読み込むプログラムを紹介しました。ファイルを扱う場合は、そのプログラムが動作する環境にも依存するため、必要となる知識が多くなります。
プログラミング言語は、環境が持つファイルを抽象的に扱う手段を用意しています。C言語の場合、ファイル名を決定すれば、ファイルを扱うためのファイルポインタが取得できます。一度ファイルポインタが取得できれば、実行環境のファイルシステムと独立度が高いインターフェイスでファイルの読み書きができます。
ファイルを使う例として、今回の問題のプログラミングを楽しんでいただければと思います。
引き続き、Project Euler の問題を紹介していきます。